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  • 無尾翼機はなぜ飛ぶ?

 更新日:'08.11.13
      '11.09.05

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 以下の記述は筆者が過去にラジコン月刊誌に寄稿した内容を基に編集し直したものです。
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無尾翼機はなぜ飛ぶ ?       2008.08.01 坪崎 邦宏

(1) 縦揺れモーメントについて(*1)
 翼が空気中を相対速度Vで前進しているとき、翼表面の各部分には空気圧力と粘性に起因する摩擦応力が生じ、それらの合力即ち空気合力Rが翼のある部分に作用します。空気合力の作用する位置は翼幅中央の翼弦上、前縁近くから後方にかけてであり、空気合力と翼弦との交点を風圧中心と言います(図1)。また、迎え角即ち翼弦と相対風Vのなす角αが変わると、空気合力の大きさ及び方向は変化し、更にその作用点即ち風圧中心は翼幅中央の翼弦上を前後に移動します。
 空気合力の結果として翼を対称面(翼幅中央部の断面)内で重心周りに回転(頭上げ/下げ)しようとするモーメントが発生するが、これは縦揺れモーメント又はピッチングモーメントと呼ばれます。普通の飛行機はみな水平尾翼を持っており、これが縦揺れモーメントのバランスを取る上で重要な役割を果たしているのは良く知られていることです。それでは水平尾翼を持たない無尾翼機の場合にはどうなるのか、これを理解することが一つのキーポイントとなります。
 翼幅方向の各部で翼弦が異なる翼を取り扱う場合、空力学的見地から決められる翼全体を代表する平均的な翼弦、即ち空力平均翼弦を考えます。図2にテーパー翼の片側を示しますが、台形状の平面図形の幾何学的重心を通る翼弦が近似的にこの空力平均翼弦に相当します(図2)。

図1 図2
 この空力平均翼弦を含む代表翼型を翼幅中央の対称面に投影した図形について、図3(1)に示すように前縁~重心G間の距離をg、前縁~後述する空力中心A間の距離をa、空力中心A~風圧中心P間の距離をb、また重心~風圧中心P間の距離をhとし、更に空気合力Rが近似的に翼弦に直角に働くものとすると、重心Gの周りの縦揺れモーメントMG
   M
G=-R・h=-R・(a+b-g)=-R・(a-g)-R・b
となります。尚、頭上げモーメントはプラス、頭下げモーメントはマイナスと定義されるためMG=-R・hとなること、及び重力は重心にかかるため重心周りのモーメントには寄与しないことに留意されたい。
図3 図4

上式の最後の項
   -R・b=M
A
は空力中心(A)周りのモーメントと言われ迎え角によって変化せず、また空力中心(A)は前縁から空力平均翼弦t
Aの約1/4の距離に位置し、迎え角によっては移動しない固有の点です。即ち
   MG=-R・(a-g)+M
A
 従って空気合力Rが風圧中心Pに働くと言うことは、図3(2)に示すようにRが空力中心Aに働いて重心周りに-R・(a-g)のモーメントが働くと同時に、空力中心Aの周りにモーメントM
Aが働くということと等価であることを示しています。図3(1)のように迎え角によって移動する風圧中心Pに空気合力が働くと言うのでは捕らえどころが無いが、図3(2)のように固定点Aに空気合力が働くと考えると、迎え角によって変化するのは空気合力Rの大きさだけとなり考え易くなります。

 (2) ピッチング安定性を得るための条件(*1)(*2)
 無尾翼機がピッチング安定性を得るための必要条件は重心周りの縦揺れモーメントM
G=0から導くことが出来ます。即ち
   M
G=-R・(a-g)+MA=0 ---(式a)
からR・(a-g)=M
Aが得られ、Rが常にプラスであることを考えると、これを満足するのは次の二つのケースです。
 ケース1(図4(1)): M
A>0即ち空力中心周りのモーメントが頭上げで、かつa>g即ち空力中心Aの前縁寄りに重心が位置する場合。MG=0ですから定常状態でピッチング安定性が得られるのは当然ですが、突風が吹くなどの非定常状態になった場合はどうでしょうか。この場合翼の迎え角αは突風を受けて増加し、空気合力Rは急増します。しかしその作用点である空力中心が重心の後方ですから頭下げ方向に作用し、αを減少即ちRを減少させる方向に働き、先の平衡状態に近づけて定常状態に戻ります。
 ケース2(図4(2)): M
A<0即ち空力中心周りのモーメントが頭下げで、かつa<g即ち空力中心Aの後縁寄りに重心が位置する場合。定常状態ではケース1と同様ピッチングは安定ですが、突風などによって翼の迎え角αが急増した場合を考えてみますと、空気合力Rが急増すると同時にその作用点である空力中心が重心の前方ですので頭上げ方向に作用し、αはますます増大してピッチングは勢いを増し、ついには制御出来なくなります。
 要約すると無尾翼機で縦の安定性を持続して確保出来るのは、唯一M
A>0でかつ重心が空力中心の前方に位置する図4 (1)の場合です。

 それではM
A>0となる翼とは具体的にどんなものでしょうか。次の3つが考えられます。
(ⅰ)図4(1)の翼型のように翼断面の中心線(カンバーライン)が逆S字状になっている反転カンバー翼。
(ⅱ)翼全体に後退角を持たせ、翼幅中央から翼端にかけて翼弦を捻り下げた翼。
(ⅲ)翼型には無関係に左右の動翼を大きく跳ね上げた状態をトリム状態として設定した翼。
 (ⅰ)のケースの設計については本資料の後半で扱いますが、(ⅱ)のケースは割愛するので資料(*2)を参照されたい。(ⅲ)は抗力が大きく軽快な飛びは期待出来ません。
 尚、図4(2)の翼型は上凸の単純なカンバーラインを持ちM
A<0となるケースで、水平尾翼を持つ普通の飛行機では水平尾翼によってピッチング安定性を得ているため、このタイプの翼型が主翼として一般的に採用されています。

 次に重心を空力中心の前方のどの位置に決めるかについて説明します。図4(1)において突風などにより迎え角αが増加した場合、重心G~空力中心A間の距離t
GAが大きいほど式(a)の中のモーメント項「-R・(a-g)=-R・tGA 」の効果は大きく、αの増加をより強く打ち消す方向に働きます。そこで距離tGAを空力平均翼弦tAで割った値tGA/tAをピッチング安定性の尺度σとして使い、無尾翼機の場合σ=0.02~0.05の値に設定するのが良いようです。
  ピッチング安定性の尺度σ=(a-g)/ t
A=tGA/tA=0.02~0.05  ---式(b)
即ち空力中心Vの前方t
GA=tA・σの位置に重心を設計することになります。
 尚σの値を大きく取り過ぎると平衡状態に戻る過程でオーバーシュートし、往復運動の振幅がだんだん大きくなり、ついにはバランスを失って墜落してしまいます。
 無尾翼機の具体的な設計法については「WINDYの設計」を参照下さい。

参考資料
*1 牧野光雄 ; 航空力学の基礎(第2版)、産業図書、2003年
*2 Martin Hepperle ; http://www.mh-aerotools.de/airfoils/index.htm
*3 UIUC Airfoil Coordinate Database-Version 2.0 ; http://www.ae.uiuc.edu/m-selig/ads/coord_database.html
*4 Martin Hepperle ; http://www.mh-aerotools.de/airfoils/javafoil.htm